「陶芸」の楽しさを富谷から発信

宮城県富谷市の「とみやど」に陶芸工房「くんぷう」を構えている澤田聡さん。30歳を過ぎてから始めた陶芸で、地元にまつわる様々な陶芸作品を生み出しています。澤田さんに陶芸の魅力について聞きました。

目次

前職の知識を活かしながら陶芸の道に

陶芸をやる前は10年ほどコンピューター関連の仕事をしていました。サラリーマンとして働いたり、仲間と一緒に小さい会社をやったりしていましたが、30歳を過ぎたあたりで、少し立ち止まって考えた時に、「自分なりに仕事は頑張ってきたものの、誰かが築いた土台の上でやっている」ということに気づいたのです。

世の中で活躍されている同世代もいるなかでもどかしさを感じ、何か自分の力で仕事をしていく方法がないかと思いました。仕事は何でもいいので、自分の力を試してみたかったのです。

その時、ちょうど父が趣味で陶芸をやっていたので、自分もこの陶芸を仕事としてやってみたらいいんじゃないかと思い、はじめてみました。ただ陶芸の経験はありません。ゼロから2年ほど陶芸を勉強し、富谷市で陶芸を始めました。コンピューター関係の仕事をしていたので、インターネットの知識があり、WEBサイトを作って、陶芸のインターネット販売もしてみました。当時、インターネットで陶芸を販売しているところはほとんどなかったので、予想以上に売れました。

そこから18年ほど陶芸を続けてきました。子ども向けの陶芸教室を小学校、中学校、高校などで開いてきました。現在は富谷市の「とみやど」という施設で陶芸の販売や陶芸体験を行っています。

陶芸の面白さを多くの人に伝えたい

 陶芸は、土をこねたりろくろで回したりして形を整え、2~3週間ほど乾燥させ、1000度以上の高温の窯で焼いて作ります。お皿やマグカップ、コーヒーカップなどいろいろなものを作っています。富谷名産のブルーベリーをデザインした陶器も作っています。自分でアイデアを考えて、形にできるということはとても面白いです。

ただ陶芸は面白い一方で難しいこともあります。自分自身が思った通りに焼きあがることの方が少ないです。みなさんはコンピューターやスマートフォンに慣れているので、「こうすれば必ずこういう結果になる」という感覚に慣れていると思いますが、陶芸は違います。材料は自然の土であり、あくまでも自然が生みだす作品なので、コントロールがなかなかできません。その分、窯を開けて焼き上がりを見る瞬間には面白さがあります。ありのままを受け入れながら陶芸をやっています。

多くの焼き物には色がついていますが。それはどうやってつけているかわかりますか?それは釉薬(ゆうやく)という液体をかけて焼いているからです。釉薬は植物の灰や長石、金属を水に溶かして作られます。金属については酸化還元反応を利用しており、例えば鉄を釉薬に入れて焼くと酸化反応で黒色に、銅を釉薬に入れて酸欠状態で焼くと還元反応が進んで赤色になります。

また、オリジナルの陶器を作ることも行っていて、例えば似顔絵とメッセージを書いた陶器を作っています。お客様から注文を頂き、写真をご提供いただいて似顔絵を書き、世界に一つだけの焼物を作っています。おじいちゃん・おばあちゃんの長寿祝いや結婚祝いにご注文される方が多いです。陶器は一生残るものになるので、とても喜んでいただいています。

陶芸を自分で作って販売することに加えて、工房で陶芸体験ができるようにしており、多くの方に陶芸の面白さを伝えています。

今後の展望

チャレンジしたいことは2つあります。1つ目は、富谷市の土で焼物を作ること。今は主に滋賀県の土を使っているのですが、いい粘土が見つかれば、富谷の土でも焼物は作れます。少しずつ調査を進めていますが、温度には耐えられることがわかってきました。今富谷では江戸時代によく飲まれたという「富谷茶」の復活プロジェクトも進んでいますので、富谷の土を使った焼き物で、富谷のお茶を飲むようなことができればいいのではないかと考えています。もう1つは、海外・外国人の方にも陶芸の魅力を届けていきたいと考えています。

おすすめの本

歴史をぜひ学んでほしいと考えています。現実を深く理解するためには、歴史を知ることでものの見方を考えられると思います。

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この記事を書いた人

東京大学教育学部卒業後、全国紙の新聞記者として広島総局・姫路支局に勤務し事件事故、高校野球、教育、選挙など幅広い分野を取材。民間企業を経て、2021年に株式会社オーナーを起業し、本教材「探究百科GATEWAY」を開発し編集長を務める。

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