「つながり」を作るスポーツトレーナー 

 仙台市でスポーツトレーナーとして活躍している伊藤良真さん。スポーツジムを拠点にしながら、人と人とをつなぐ「つながりづくり」をしています。その原点には、東日本大震災の経験がありました。

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スポーツトレーナーの道へ

私は岩手県の出身で、中学校時代はバレーボールに打ち込み、高校もバレーボールができるところを選びました。高校卒業後の進路も「就職してバレーを続けようかな」と思っていたのですが、高校3年生の時に、専門学校に進めば「スポーツトレーナー」という道を目指せることを知りました。

スポーツトレーナーという仕事はその時初めて知ったのですが、アメリカのメジャーリーグでは、スポーツトレーナーとして活躍されている方がいることや、自分としても少しでもスポーツに関わる仕事がしたいと思い目指すことにしました。

専門学校は仙台の学校に通いました。その時に東京のトレーニングジムに見学に行ったのですが、その時に聞いた話が衝撃でした。それは、東京のスポーツ強豪校と言われる高校では、部活動で取り入れているトレーニングが東北の高校とは全く違っていたことです。専門的には「S&C(ストレングス&コンディショニング)」というのですが、ケガの予防をしながら、競技に必要な身体能力を向上させていくトレーニングです。

例えば重いものを持ち上げるよりも、筋肉の可動域や柔軟性を高めた方が競技力の向上につながるという考え方に立っています。こういったトレーニング方法を東北にも広め、スポーツで東北を盛り上げたいと思い、自分でトレーニングジムを経営してみたいと思うようになりました。

ジムからつくるコミュニティ


そして2020年、仙台市宮城野区に「Workout Reds」というジムを東北出身の仲間と一緒に立ち上げました。「東北で一番通いやすい、楽しく続けられるジム」を目指しています。一般的なスポーツジムでは入会から時間が経つにつれモチベーションが低下し、ジム通いを辞めてしまうという課題があります。そこで、私のジムでは通う人が楽しくトレーニングを続けられるよう、趣味のつながり作りやジムに通う人々が気軽に話せるスペースの新設など、コミュニティづくりに力を入れています。

実は高校2年生の時に、東日本大震災を経験しています。高校は岩手県宮古市にあったのですが、バレーボール部の練習が終わった時、学校で激しい揺れに襲われ、校舎に迫ってくる津波を目撃しました。校舎は浸水し、あたりにはがれきが散乱していました。電気が消えて何が起きているかわからない中で、夜23時頃に何とか学校を抜け出しました。星がとてもきれいだったことは今でも思い出しています。

 自分にとって東日本大震災は大きな経験でした。スポーツで東北を盛り上げたいと思ったのも、震災を経験したからです。そして、災害から災害に立ち向かう人々の姿を見て気づいたのは「人と人とのつながり」の大切さでした。だからこそ、今はジムを通じたつながりづくりをしたいと思っています。

ジムの近くの商店街の活性化にも関わっています。商店街で働く人が元気になることで、お客様も気持ちよく買い物することができて交流が増えると思います。商店街を含めた地域が元気になる地域づくりを行っていくひとつの方法として、ジムでのコミュニティづくりと健康づくりを行うことができたら、もっともっと活気が溢れると思います。

スポーツの楽しさを味わうために 

「ケガをしないためにトレーニングをする」ということを最初に考えてほしいと思います。みなさんはスポーツが楽しいから競技をやっていると思うんです。スポーツの楽しさを味わうためにはそのけがをしないことが一番。

 スポーツや運動は体に負担がかかるので、負担がかかった筋肉をほぐしたり、柔軟運動を取り入れたりすることがとても大事になります。今はバレーボールのジュニアチームのコーチも務めていますし、私のジムには中学生や高校生も通えるので、若い世代にトレーニングの方法を伝えていきたいと思います。それが試合や大会で勝利することにつながればいいなと思っています。

写真提供=伊藤さん

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この記事を書いた人

東京大学教育学部卒業後、全国紙の新聞記者として広島総局・姫路支局に勤務し事件事故、高校野球、教育、選挙など幅広い分野を取材。民間企業を経て、2021年に株式会社オーナーを起業し、本教材「探究百科GATEWAY」を開発し編集長を務める。

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