語学を学び、そして教える

福島県福島市で「リングイスト語学スクール」を経営している伊藤オディさん。モンゴルご出身で、モンゴル語、英語、日本語に加えて中国語、フランス語、ロシア語を話すことができます。国内外問わず通訳の仕事や、県外の企業にて国際的な人材紹介に関するアドバイザーも務めているほか、大学、専門学校で講師としても活動している伊藤さんに、なぜ語学を学び、教えているのかについて伺いました。

目次

「世の中を変えたい」という志

私の祖母が母語のモンゴル語に加えてロシア語が堪能で、幼少期から私にも語学に沢山触れさせてくれたことがきっかけで語学に興味を持ちました。祖母が幼少期に私にロシア語と英語の絵本を読み聞かせ、単語の確認テストをした思い出は今でも鮮明に覚えています。その後、小学校、中学校は中国語を教えてくれる学校へ行きました。英語はもう祖母からの教えや自分での学習で学ぶことができていました。何より当時モンゴル国内で英語を教える学校は授業料が高すぎました。

そして、中学校在学時に将来自分がどうなりたいのかを考えたときに、「世の中を変えたい」と強く思ったのです。ではそのために何が必要か?-お金です。そのお金をより多く得るために、経営学を学ぶ必要がある。そう考え、将来は日本の大学で経営学を学びたいと志しました。その後進学した新モンゴル高校という日本語を学べる高校を経て、無事日本の国立大学である福島大学、経済経営学類に進学をしました。

日々経営学の勉強に熱心に取り組み、大学院に進学してからはオーストラリアの英語研修にも参加して周りが“英語”を学ぶ中、私は“英語の教え方”を学び、コピーし、大学院2年次に現在も経営している「リングイスト語学スクール」で起業したのです。私には今まで培ってきた語学力と、大学で学んだ経営学の知識、それに加えて「人に教える」ということがとても尊いことだと幼少期から教わってきたため、私の全てを活かして仕事にするために語学スクールを立ち上げました。

現在もスクールで生徒を多数受け持つほかに、通訳の仕事で国内外問わず依頼を受けることも多いです。3大学で英会話や文化学を教える講師としても教壇に立ちますし、海外からの人材を受け入れたい企業にアドバイザーとして国際的な観点から助言をする仕事もあります。仕事は多数ありますし、毎日忙しいですが、全部やりがいがあって本当に面白いです。将来は母国モンゴルへ帰国し、外務大臣になって、政治の経験を積んだ後に国連に入ることを目標にしています。今取り組んでいる仕事は、「世の中を変えたい」という私の将来の夢への途中にあるものにすぎません。資金を貯め、語学・経営の知識も経験も積み、将来必ずこの夢を達成できるように志をいつも高く持つことを心がけています。本来夢をかなえるための”方法”である勉強することや仕事をすること自体がゴールとなってしまわないように、自分の将来の夢や目標をしっかりと見つめなおすことが大切です。

教えることは最大のプレゼント

★“教える”ということ

…私が語学を人に教える上で大事にしているのは、「“教える”ということは、人にあげられる最大のプレゼント」であることです。これは幼少期に祖母から教わった言葉です。人に何かをしてあげたいと思ったときに、私には語学がありました。語学を教えることで、相手にとって大きなプレゼントとなってくれればという気持ちで常に誇りをもって教えています。


また、私は今まで大学で教えていた英会話スクール、大学での講義、経営する「リングイスト語学スクール」、などで教えてきた生徒数は1,000人を超えます。その都度、“教える”側である私が、生徒から“教わる”ことも多いのです。主に担当する生徒の多くは学生ですが、学生からは若年層の流行を聞いて私の教え方やSNS発信の参考にすることも多々あります。また、私が教える生徒の中には医療従事者やビジネスマンも多くいます。未知だった医療の知識やビジネスの知識にも触れることができ、教える私も勉強になる時間をたくさん過ごしています。

 ところで、私はよく自分がスクールで受け持った生徒の中で特に印象に残っている生徒はどんな人物かと質問を受けることがよくあります。答えは全員です。私は、本気で語学を勉強しに来る人しか相手にしていません。私の授業は厳しいし、楽しくない。しかし、私もいつも本気で教えています。全力で頑張れる人にのみ、私も全力で応援する、そんなポリシーを掲げつつ、生徒にとって私の教えが大きなプレゼントになってくれたら嬉しいですね。

語学習得のコツ

私が学生の頃に努力したのは、語学力を身につけること、ITを学ぶこと、コミュニケーション能力・パブリックスピーキング力をつけること、政治に興味を持つこと…など社会に出る前に身に着けておくと後からとても楽になります。そして、社会に出たら自分の気持ちは自分でコントロールするしかなくなります。自分のストレス度合いを図り、自分で機嫌を取れるようにするためにも、脳科学や幸せ物質、心理学を学ぶこともおすすめです。

もし皆さんが語学を習得したいのであれば、事前準備を大切にしてください。学びたい言語を母語とする国に合わせて、自分がその国の人であるかのように外見や立ち居振る舞いなどの「アイデンティティ」を変える。自分の周りの「環境」もその国の仕様にする。映画や音楽鑑賞などの「趣味」と語学を結び付ける。この3つができたら、共に学ぶ「仲間」と、目指す先の「憧れ」となる人を見つけてください。

そして何より重要なのは「自分を信じる」ということです。自分なら絶対にできると信じて、ひたむきに努力し続けてほしいと思います。
そして、どうしてこの言語を勉強したいのかという「理由」を常に意識して勉強に励んでください。何となく勉強するままでは、絶対に身に付きません。

語学の中でも英語を勉強する上でのポイントは、順番を意識することです。まずは英語の全36音の発音を習得し、約1,000程の頻出単語を暗記し、中学レベルの文法を完璧にする。その後はひたすら会話の練習をしてみてください。外国人の友人やALTの先生など、周囲にいる外国人と沢山会話することが、必ずあなたの英語力の糧となります。最後に、人生は運が1%、努力が99%のゲームです。とことん自分のレベル上げをして、1度きりのゲームを昇り詰めていってください。応援しています。

◆おすすめの本
ロンダ・バーン「The Secret」(KADOKAWA)
ロバート キヨサキ「金持ち父さん貧乏父さん」(筑摩書房)
稲盛和夫「成功への情熱」(PHP研究所)
など、自己啓発書を読むと、将来自分がどうなりたいのか見つめなおすきっかけにもなりますし、夢に向かってどう努力したらよいのかヒントがもらえるはずです。この3冊は高校生でも読みやすいためおすすめです。

(本の情報:国立国会図書館サーチ)


写真提供=伊藤さん

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この記事を書いた人

地域で挑戦する人や企業を豊かにすることを目的とした福島創業のチーム。 ライターやデザイナー、映像クリエイター、エンジニア等といったプロが集まり、 各々の専門スキルや個性を活かしながら、関わるお客様や地域の資本を豊かにするため活動している。

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