1つのお店から、「自分がやりたいことをやり続ける」

岩手県奥州市出身で、現在は奥州市江刺で古道具や食料品を扱う「FUCHI」・「YOLISUL」の店主を務める久保友佳さん。古着屋や古道具屋など、自分の好きなことに関わる仕事だけを続けてきたという久保さんがどんな想いを持っているのか。これまでの人生に加えて、今後の展望についてもお聞きしました。

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自分の「すき」に関わり続ける

高校を卒業してすぐは、とりあえずお金を貯めようと飲食店で働いていました。特にやりたいことがなかったので、自分で好きに動けるようにお金を貯めようと考えていました。

そうして飲食店で働く中で、ふと「何かおもしろいことをやりたい」と思うようになって。そこで浮かんだのが、古着屋で働くこと。服が好きで、よく通っていたお店があるんですが、そこは地域の中でも特にカリスマ的なお店で。「そんなところで働けたらかっこいいな」という単純な理由から採用してほしいと連絡をして、面接などを経た後、そのお店で働くことが決まりました。

そのお店が新店舗をオープンすることになって、働き始めてすぐに新店舗に配属されることになったんです。最初はその新しいお店で接客を担当していました。

働いてから数年後には3〜4店舗の店長を務めて、最終的にはエリアマネージャーとして複数店舗の経営を管理するポジションになりました。その会社では最終的に12年働いたんですが、忙しい状態がずっと続いていて。もう少し自分のペースに合った仕事をしようと考えて、その会社を退職し、古道具を扱うお店「FUCHI」を2017年に始めました。

きっかけになったのは、奥州市の水沢駅の東口にあるカフェ「Cafe&Living UCHIDA(以下、UCHIDA)」のオープンです。UCHIDAの運営会社の代表が、古着屋で働いていた頃の同僚でした。お店の改修を工務店に依頼しながら、できるところはスタッフたちで行うというので、その作業を手伝っていた時期があったんです。

改修の他にも、解体される家を回って、そのお店で扱う古材や古道具を集める作業も行っていました。そうして集まった古道具がたくさんあったので、「お店で使えない分は他の人に使ってもらえるように販売しよう」ということになり、その店の2階にFUCHIのオープンが決まりました。

その当時は、自分で何か新しい仕事を始められたらいいなと思って、リメイクした服や自作したアクセサリーをオンラインショップで販売していたんです。もともと古道具屋をやろうとしていたわけではないですが、古道具が好きだったのと自分の好きなことに関わるお店を持ちたいと考えていたので、すごく夢のような出来事でしたね。本当に成り行きでしたが、運がよかったんだと思います。

「よりよく」提案し、次の人に

FUCHIは2020年に江刺に移転。今は作家ものの器や雑貨を扱う「ya.」と「FUCHI」の2店舗を併設した「YOLISUL」として運営しています。「ya.」も古着屋で働いていた別の同僚が営んでいるお店です。

今FUCHIでは、古道具だけでなく、私が好きな作家さんの作品や自分がおいしいと感じた食料品や調味料の販売を行っています。ほかに、ドリンクを提供するカフェスペースと展示やイベントを行うギャラリースペースの運営も始めました。

扱っている商品はどれも今まで繋がりのあった人から仕入れているものばかりなので、本当に人の縁やタイミングに助けられてここまで辿りつけたことを実感しています。実はFUCHIというお店の名前は「縁(えん)」という言葉を由来にしているんですが、まさにその由来通りの状況が日々続いています。

YOLISULは「よりよくなる、よりよくする」を略した言葉として名付けました。発想のヒントになったのは、お笑い芸人のダウンタウン・浜田雅功さんが歌っている「WOW WAR TONIGHT~時には起こせよムーヴメント」の歌詞にある「Getting better Begin to Make it Better」という言葉です。

YOLISUL、FUCHIで販売している古道具を手にした状態のまま使うのもいいけど、その人なりによりよく工夫して、楽しみながら使ってほしい。

例えば、使い物にならなくなったしゃもじをドアノブにしてみたり、古くなった瓶にドライフラワーを挿してみたり。古道具をよりよくする使い方をお客さんに提案したいという思いから、お店の名前をつけました。

取り扱っている古道具は、もともとは解体される家と一緒に処分される予定だったものばかりですが、きれいな状態にしてお店に並べていると、「かわいい」って言いながら写真を撮って楽しんでくれるお客さんもいるんですよね。

一つひとつ自分が選んできたものだということもあって、ここにあるのは本当に思い入れのあるものばかりです。前の使い手の人の想いがこもった古道具をこのお店を通して、次の人に繋いでいくことができるのは本当に嬉しいことですね。

「やりたい」と思うことをやり続ける

古着屋や古道具屋など、職業は変わっていますが、その時にやりたいと思っていることをやっているだけで、私自身はあまり変化していないんです。

日常もそんな感じで、お店をやりながら服をつくりたいと思ったらつくるし、陶芸がしたいと思ったら工房に行って器づくりをしたり、思い立って絵を描いたりしています。

なので、将来何をやりたいかと聞かれると高校生のときと同じで、今も自分で全然わかっていなくて。これからもその時々に自分がやりたいと思っていることをやり続けていきたいなと思っています。

おすすめの本
北岡明佳「だまし絵の世界」(講談社)

古着屋で働いていた頃、スタッフとのコミュニケーションの仕方で悩んだ時期に受けたセミナーで、だまし絵を見せられたんです。その時に私と一緒に参加していたスタッフと全然ものの見え方が違うことがわかりました。同じものを見ていても、人によって見方が違うということに気づけたのはだまし絵のおかげなので、この本をおすすめします。初めて見た時以来、心が広くなった感覚があるので、この本を読めてよかったなと思っています。

(本の情報:国立国会図書館サーチ)

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この記事を書いた人

1994年生まれ。岩手県奥州市出身。2019年4月から企画・執筆・編集を行うフリーランスとして活動。その他、Next Commons Lab遠野ディレクター、日本仕事百貨ローカルライター、インターネットメディア協会事務局などを務める。将来の夢は、奥田民生のように生きること。

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