コロナ禍でも透析患者さんの命を守りたい

福島県三春町出身の佐久間朝希さん。高校卒業後、医療系の専門学校に3年間通い、国家試験の「臨床工学技士」に合格。現在は福島県内のクリニックに勤務して透析患者さんのケアをしています。コロナ禍でも患者さんの命を守るため奮闘する佐久間さんのストーリーをご覧ください。

目次

「臨床工学技師」を目指して

私が高校3年生の時に「臨床工学技師」という職業があることを知りました。「臨床工学技師」とは、「生命維持管理装置」を扱う人のことで、人工呼吸器、人工心肺、透析の3つを中心に、様々な機械の管理を行います。

私は高校で看護師を目指すクラスに所属しており、「医療」と「工業」の両方に興味があったので、「臨床工学技師」の勉強ができる専門学校への進学を決めました。

「透析」は、専門学校時代に実習で経験しました。実習前は「生命維持管理装置」という名前から、「緊急対応」「手術」「命に関わる現場」などを想像していましたが、透析の治療はアクシデントがなければ平穏に行われるケースがほとんど。実習を受けてみて初めて「こういうものなんだな」と実感しました。

とはいえ、クリニックに就職した後はとても苦労しました。専門学校で学んだ内容と、クリニックでの実践内容がうまく結びつかず、新たに覚えることが山積みだったからです。「この場合は、この理由でこれをやるんだ」と、実践しながら学んでいきました。

また、私は高校を出て専門学校を卒業後、すぐにクリニックに就職したため、社会人経験はゼロ。他のスタッフさんから「人間関係」や「社会」、「コミュニケーション」についても教えてもらいました。

コロナ禍でも透析治療を

クリニックでは透析治療に携わっています。

日本では透析にかかる時間は4時間程が一般的で、透析をはじめるまでに事前準備がかなりあります。機械の準備のほかにも、患者さんのヒアリング、ドクターとのつなぎ役を担当しています。

※透析とは、正常に機能しなくなった腎臓のかわりに、体内に溜まった老廃物や毒素、余分な水分をろ過する治療です。透析が必要と診断された患者さんは、標準的には週3回透析を行わなければならず、治療は生涯続きます。

患者さんは基本的には来院・通院する方がほとんどで、寝たきりの患者さんもいます。

標準的な治療をするためには、週に3回来院することが必要で、人によって性格も症状も体調も異なります。患者さんによって透析の方法や生活アドバイスも変えています。透析を行うに当たっては、患者さんとのコミュニケーションが最も大切だと感じています。

コロナ禍で医療がひっ迫していても、透析の治療を止めることはできません。先日も防護服を着て、コロナに感染している患者さんの透析を実施しました。透析を数日間やらないだけで患者さんは死に至ることもあります。しっかりとONとOFFの切り替えを行い、安全な治療が出来るよう心がけています。

医療の道を目指すために

これからは、情報の取捨選択のサポートをしていきたいと考えています。患者さんの話を聞いていると、医療従事者の言葉よりもネットやテレビの情報を鵜呑みにする傾向が強いです。テレビやネットで「健康に良い」「〇〇に効く」と謳うサプリを飲んだところで、透析患者さんには効果はありません。他にも、「おばあちゃんの知恵袋」のような古典的な考えを信じ込んでしまっているご年配の方も。人の意識を変えるのはなかなか難しいですが、溢れかえった様々な情報に惑わされず、医療従事者の言葉を信じてもらえるよう、患者さんが「今一番何をしてほしいか、何を欲しているのか」を理解し、患者さんが他愛のないことでも相談できるような信頼関係を築いていきたいですね。

医療に興味がある方は、「コミュニケーション能力」を今のうちから養っておいてください。患者さんと円滑なコミュニケーションを取ることはもちろん、職場内でも「分からない」ことはしっかり伝えないと現場では通用しません。また、「チーム医療」で患者さんの対応をしますので、専門外の医療職の方々ともコミュニケーションを取る必要もあります。

ここまで色々とお伝えしてきましたが、医療の仕事は現場に行かないとわからないことがたくさんあります。可能であれば医療の現場を見学して実際に扱う機械や仕事を見てみましょう。するとなりたいイメージが具体的になります。「やっぱりこれを目指したい」、「やっぱり肌に合っていないかも」と、ご自身で感じてほしいです。イメージできないまま仕事に就いてしまうと、気を病んでしまうケースもありますから。

医療従事者を目指したいなら、しっかり自分の目で見て、考えてみてください。正直、医療は精神的苦痛が大きい仕事です。生半可な気持ちで進んで、後々後悔してほしくありません。高校生のうちに色々触れてみて、興味がある分野や自分に合う仕事を見極めてほしいです。また、大人になると趣味に割ける時間は少なくなる場合もあります。若くて体力があるうちにたくさん遊び、医療に限らず色々な分野に挑戦してみてください。

おすすめの本
本ではありませんが、鳥取県在住のフォトグラファーSUBARUさんの「note」の記事をおすすめします。

私はカメラが趣味でSUBARUさんnoteを読み始めましたが、写真に対する考えやコツだけでなく、人生全般に対して学ぶことがあります。
このnoteを読んで、自分の中で納得する感覚があり、物事の見え方が変わってきました。自分を見直すきっかけを与えてくれた方です。無料で閲覧可能ですので、ぜひ調べて読んでみてください。

写真提供=佐久間さん

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この記事を書いた人

地域で挑戦する人や企業を豊かにすることを目的とした福島創業のチーム。 ライターやデザイナー、映像クリエイター、エンジニア等といったプロが集まり、 各々の専門スキルや個性を活かしながら、関わるお客様や地域の資本を豊かにするため活動している。

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